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2008年01月05日

[読書] 決定力を鍛える―チェス世界王者に学ぶ生き方の秘訣 - ガルリ・カスパロフ

本日の読書はガルリ・カスパロフ「決定力を鍛える―チェス世界王者に学ぶ生き方の秘訣」。

チェスの元世界チャンピオン。
チェスに興味がなくてもコンピュータに少しでも興味がある人ならディープ・ブルーとの対戦で知っている名前。
1000年後の人工知能の歴史の中にも確実に残る名前となるだろう。

ふたつの理由でこの本には興味があった。
ひとつはビジネス書としての側面。ビジネスにおける意思決定方法の参考書として。
もうひとつは人間の意思というものを、知の先端に居る人間がどのように捉えているのかという興味として。

冒頭部分から引用すると、

「スタイルは自分で好きなものを選べるわけではない。汎用的なソフトウェアをダウンロードしてインストールするのとは違うのだ。むしろもっとも自分に合ったものを知り、チャレンジとテストを通して独自の方法を発達させなければならない。自分には何が欠けているのか? 長所とは何か? どんなチャレンジを避ける傾向にあるのか、それはなぜか?
成功の秘訣を伝えることができないのは、自分の判断を分析することでしか見つからないものだからだ。よりよい意思決定方法は教えられない。だがみずから学ぶことはできる。」

前述の羽生 善治「決断力」では将棋の学習の過程をこのように述べている。

 [1]アイデアを思い浮かべる。
 [2]それが上手くいくか細かく調べる。
 [3]実践で実行する。
 [4]検証、反省する。

おそらくはどちらも同じことを意図しているのだろうが、カスパロフのほうが検証、反省するということの内容をより明確に意識し、示唆に富んでいる。
改善すべきは「どういうときに何をすべきか」だけではなく、「なぜそう意思決定したのか」という決定のプロセスを意識し、プロセス自体の問題に光を当て、プロセスを改善することだ。
そうでなければ無数に存在する局面には対応できないのである。

さらにカスパロフはこう述べる。

「私たちは意思決定プロセスを意識しなければならないが、そのプロセスの実践を通じて直感-無意識-の働きが向上していく。この不自然な行動が必要なのは、成人である私たちはすでに、よかれあしかれ自分のパターンを形成しているからだ。悪いパターンを正し、よいパターンをさらに改善するには、積極的に自分をもっと知ろうとしなければならない。」

無意識の鍛錬というものを明確に意識している啓蒙書というものには初めて出会った。

意思決定は意識と無意識の複合によって成される。
無意識をテキスト化できない故に、優れた意思決定方法を完全にテキスト化することはできないのだ。

では巷にあふれる自己啓発書の類とは何ものか?
あるものは意識の改善、そしてあるものは無意識のうちに無意識を改善するプロセスを含んでいるものなのだ。
しかし後者ようなテキストであっても、そのことを著者自身が意識して明確に書いていることはあまり無いように思う。
「無意識の改善」という視点で読み直してみるのも良いかもしれない。




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投稿者 isok : 2008年01月05日 15:17